先日、16年前に義父が大切にしていた屋久杉の輪切り一枚板を、宮崎の工芸店に買い取っていただきました。
この板は直径およそ1メートル、厚さ4.5〜5センチほどの円形の板で、重さは測ってみると約15キロほどありました。長い間、義父母が暮らしていたマンションの片隅に置かれていたものです。
義父は1960年代、屋久島で営林署長として働いていました。当時はまだ屋久杉の伐採が行われていた時代で、その頃に手に入れた材のようです。妻はその屋久島で生まれました。20年以上前になりますが屋久島を訪れ、屋久杉の森を歩いたことがあります。深い森の中で出会った巨木は、言葉にしにくいほど神秘的で、どこか厳かな気持ちになったことを今でもよく覚えています。
今回、この板をどうしたものかと思い、九州の屋久杉を扱う工房に写真を送って見ていただきました。すると「泡瘤(あわこぶ)」と呼ばれる、今ではなかなか手に入らない貴重な瘤材ではないかとのことでした。現在は屋久杉の伐採が禁止されているため、流通する材の多くは「土埋木(どまいぼく)」と呼ばれる、土中から掘り出された古い材だそうです。それに2016年以降はその土埋木の掘り出しも禁じられています。この板は、1960年代という時代背景から見ても、まだ普通に伐採されていた頃の材だろうとのお話でした。
義父母の住まいを整理する中で見つかったこの板ですが、捨ててしまうにはどうしても忍びない気持ちがありました。長い年月を生きた木ですし、義父の思い出の品でもあります。
今回、宮崎の屋久杉を専門に扱う工芸店さんに引き取っていただくことになり、梱包して送り出しました。大きな板なので梱包には少し工夫が必要でしたが、無事に届き、「丁寧に梱包されていました」と連絡をいただき、ほっとしました。この板には脚が二つ付いていました。これは屋久島の営林署にいた頃、義父が自分で作ったものだそうです。厚さ7.5センチほどある立派な屋久杉の脚でした。二個口になってしまうので送るのをやめようかとも思いましたが、工房の方から「ぜひ送ってください」と言っていただき、一緒に送りました。きっと何かに生まれ変わるのでしょう。
工房の方のお話では、この板はおそらく「ちゃぶ台」になるのではないかとのことでした。もしそうなれば、屋久島の森で長い年月を生きた木が、半世紀の時を経て、また誰かの暮らしの中で使われることになります。義父が大切にしていた屋久杉が、再び活かされる道が開かれたことを嬉しく思っています。
どんなちゃぶ台になるのか、少し楽しみでもあります。


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