人間には「まあ、このくらいでお茶を濁しておこう」という素晴らしい知恵がある。だからこそ、宴会の席順も数分で決まる。しかし、融通の利かないコンピュータに「完璧な席順」を計算させようとすると、とんでもない事態が起きる。
たった30人の席順であっても、そこに「相性の良し悪し」という条件を加えると、パターン数は一気に大爆発する。その数は、なんと「131桁」という天文学的な数字になるという。
これがどれほど異常な数かというと、全宇宙に存在するすべての原子の数(約80桁)を遥かに超えている。並列に繋いだ現代の最高峰のスーパーコンピュータに、1秒間に1京回という超高速計算をさせたとしても、地球が滅亡するまでに終わらない。これが「組み合わせ爆発」の恐ろしさ。
こうした「選択肢が多すぎてスーパーコンピュータでもお手上げになる問題」を解決するのが、量子コンピュータだ。従来のコンピュータンは、どれほど高性能でも「1パターンずつ順番に」しか試せない。一方、量子コンピュータは、「重ね合わせ」の性質を使い、すべてのパターンを「同時に存在する波」として処理する。そして、ダメな席順の波同士を打ち消し合わせ、最適な答えの波だけを強め合うことで、一瞬にして正解を浮かび上がらせるという。
ただし、量子コンピュータがすべての面でスーパーコンピュータより優れているわけではない。両者には明確な役割分担がある。すでにある膨大なデータやルールを基に、天気予報やシミュレーションを確実にこなすのは、従来のコンピュータの独壇場だ。逆に、パターン数が爆発する未知の領域の計算は、量子コンピュータの出番となる。この両者が手を取り合うことで、いま、医療の世界に劇的な革命が起きようとしている。
次回につづく。


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