音楽活動の傍ら、平和を愛する坂本龍一さんは原発反対をはじめ様々な社会活動も行っていた。亡くなった3月の初めには神宮外苑の樹木の保全に関して東京都知事にお手紙を送付していた。目先の再開発のために100年かけて育ってきた樹木を伐採するのは耐え難かったのだろう。手紙の文章がYahooに掲載されていたので、残しておきたい。
東京都知事
小池百合子様
突然のお手紙、失礼します。私は音楽家の坂本龍一です。
神宮外苑の再開発について私の考えをお伝えしたく筆をとりました。どうかご一読ください。
率直に言って、目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません。
これらの樹々はどんな人にも恩恵をもたらしますが、開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしか過ぎません。この樹々は一度失ったら二度と取り戻すことができない自然です。
私が住むニューヨークでは、2007年、当時のブルームバーグ市長が市内に100万本の木を植えるというプロジェクトをスタートさせました。環境面や心の健康への配慮、社会正義、そして何より未来のためであるとの目標をかかげてのこと、慧眼(けいがん)です。NY市に追随するように、ボストンやLAなどのアメリカの大都市や中規模都市でも植林キャンペーンが進んでいます。(中略)
いま世界はSDGs(持続可能な開発目標)を推進していますが、神宮外苑の開発はとても持続可能なものとは言えません。持続可能であらんとするなら、これらの樹々を私たちが未来の子供達へと手渡せるよう、現在進められている神宮外苑地区再開発計画を中断し、計画を見直すべきです。
東京を「都市と自然の聖地」と位置づけ、そのゴールに向け政治主導をすることこそ、世界の称賛を得るのではないでしょうか。
そして、神宮外苑を未来永劫(えいごう)守るためにも、むしろこの機会に神宮外苑を日本の名勝として指定していただくことを謹んでお願いしたく存じます。
あなたのリーダーシップに期待します。
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