ロートレックの絵を見ていたらNHKの大河ドラマの蔦屋重三郎のことが思い浮かんだ。
19世紀フランスの数多くの画家の例に漏れずロートレックも日本の浮世絵の影響を受けていたと思う。遺伝的な病のために幼少期に脚の成長が止まり、身体的なハンデを負ったロートレックだったが、彼の芸術は驚異的なエネルギーを放ち、印象派以降の世紀末フランスを代表する存在となった。一方、江戸時代の吉原において、出版の世界で芸術を育み、浮世絵師たちを支えた蔦屋重三郎。彼は喜多川歌麿や東洲斎写楽といった才能を見出し、遊女や役者の姿を描く浮世絵を発展させた。
ロートレックの作品の多くは、当時のパリの歓楽街や娼館を舞台にしている。彼は娼婦たちの何気ない日常を、驚くほどの速筆で生き生きと描いた。華やかさと退廃が入り混じるムーラン・ルージュのポスターも有名だが、娼館の中で繰り広げられる女性たちの仕草や表情を捉えた作品には、人間観察の鋭さと温かみが感じられる。歓楽街を舞台にしながら、そこに生きる人々の美しさや哀愁を描き出した。
ロートレックの筆致はまさに”瞬間の芸術”とも言えるものだ。素早いタッチで描き上げる速描きの技術には、単なる技巧を超えた生命力が宿っている。


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