米国自動車産業の中心地デトロイトは日本をはじめとする海外からの輸入車に押されて21世紀の初頭から財政的にかなり厳しい状態に追い込まれた。市の財政破綻を救うための切り札として後期印象派の名品が数多く収蔵されていたデトロイト美術館の美術作品が売却の危機に瀕する。原田マハのアート小説の筆致が冴え、遅読の私だが、一気に読み進めた。
デトロイト美術館には事実ゴッホ、セザンヌ、マチスなどの名品が数多くあるらしい。その中でもセザンヌの奥さんを描いたオルタンスの肖像は名品中の名品。どうしても見に行きたくなった。セザンヌはリンゴなどの静物やサント・ビクトワールの山の絵が有名だが、奥さんオルタンス・フィケの肖像も20点近く描いている。
気難しい性格のセザンヌはモデルが少しでも動くと機嫌が悪くなり、「リンゴは動かない」と言って怒ったのは有名。辛抱強いオルタンスにしかモデルは務まらなかったのだろう。

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